新型コロナウィルスの影響を受けて、広く導入されたリモートワークが、最近になって縮小傾向にある。
ビッグテックをはじめ、それに倣う形で出社回帰の方針を打ち出す企業も少なくない。
これらの企業の発信を見ていると、多くが生産性やコミュニケーションのしづらさを理由にあげているケースが多い。実際、感覚的にはこれは理解できなくもない。
仮に、生産性を理由とした出社回帰を狙うのであれば、リモートワークによって生産性がどの程度低下し、出社回帰によってどのような機序があってどの程度向上することを見込んでいるかの仮説や、その後の検証結果まで知りたいところであるが、今のところ自分はそのような情報を見つけられていない(多分に社内事情を含んだデータになるはずなので、そう気軽に出てくることも期待できない)。
本当にリモートワークで生産性は下がるのか。業務遂行上、出社回帰したほうが事業はやりやすいのか。
AIに手伝ってもらって、リモートワークと生産性の相関についての研究を調べてみることにした。
生産性に関する議論は、就業環境や文化的な側面からの影響も強く受けると考えられるので、日本国内での研究に絞って調べた。
まず、ChatGPTに「リモートワークにおける生産性についての研究をいくつか教えて下さい」と訪ねてリストアップしてもらった。
何度かやり取りをした結果、いくつか自分が知りたいリモートワークと生産性の相関について詳しく記述していると思われたものが見つかったので、それらを詳しく読みつつ、Google NotebookLMに読ませて、対話しつつまとめたものをいくつか紹介してみる。
1つ目はこちら。
www.rieti.go.jp
3,324人を対象としたアンケート調査で、コロナ禍で在宅勤務をした場合の生産性を訪ねたところ、「在宅勤務の方が低い」を選択した人が最も多かった。この結果を平均値で表すと、職場勤務の生産性を100とすれば、在宅勤務の生産性は60.6%になるという(アンケートによる主観的な生産性であることに留意が必要)。特にコロナを契機に開始した人の生産性は低く、高学歴者や長時間通勤者では生産性低下が小さいことが分かった。
この値は年齢やジェンダーでは明確な差は見られないものの、学歴、年収、職種では比較的大きな差がある。
職種別に見ると、
- 専門的・技術的職種 69.2%
- 管理職 67.5%
- 営業職 57.8%
- 販売職 40.1%
などとなる。
産業別では、
- 情報通信業 73.5%
- 製造業 70.1%
- 教育 54.4%
などだという。
ここから見ると、アンケート調査の結果としては、リモートによって生産性が低下することが示唆されているが、自分が従事している、「情報通信業」の「専門的・技術的職種」では最もその影響が少ない可能性がある。
2つ目はこちら。
www.rieti.go.jp
これは、日本の労働者を対象とした独自アンケート調査に基づき、コロナ禍における在宅勤務の実態と生産性への影響を分析しいる。
分析の結果、在宅勤務頻度と主観的生産性の間には最小二乗法により正の相関が見られるものの、操作変数としてテレワークの実施可能性を用いると有意ではなくなるという結果が出ている。つまり、在宅勤務の増加が直接的に生産性向上をもたらすとは断言できない一方で、もともと生産性の高い人が在宅勤務を選択している可能性を示唆している。
さらに、コロナ禍で強制的に在宅勤務に移行した人の中には、当初生産性が低下したものの、その後回復傾向を示した人もいることが明らかになった。 これは在宅勤務への順応やインフラ整備によって、生産性を取り戻せる可能性を示唆している。
在宅勤務で生産性を向上させるためには、仕事とプライベートの区別、職場とのコミュニケーション、企業からのサポートといった課題解決が重要であると指摘されている。
これらから考えられるのは、コロナ禍によってリモートワークへ移行した企業が、生産性の低下に見舞われている状況はある程度確かなようである。一方で、従来からリモートワークを選択している企業は、コロナ禍になってからリモートワークへ移行したケースよりも生産性は高いという結果もあり、今後も継続的に環境整備への投資を続けていくことで、生産性の低下は改善できる可能性も考えられる。
自分の今の勤め先は、コロナ禍以前から比較的リモートワークが併用されていたし、今後もリモートワークは継続される見通しであるので、環境整備やコミュニケーションルールなどの構造面から「リモートワーク前提の業務プロセス」を整え続けることで成果が出せないかこだわっていきたい。